裁判所、警察を通じた発信者情報開示請求への対応方針

本文書の目的

株式会社はてな(以下「はてな」)が、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任制限法」)に基づき、発信者情報開示請求を受けた際の対応の流れについては「はてな発信者情報開示の流れ」に記載している。
本文書では、はてなが裁判所を通じた発信者情報開示命令事件として発信者情報開示を請求された場合の対応方針について記載する。さらに、裁判所への仮処分命令申立や訴訟により発信者情報開示を請求された場合の対応方針と、警察から発信者情報の開示を求められた際の対応方針も合わせて記載する。

発信者情報開示命令事件について

発信者情報開示命令事件とは、令和3年(2021 年)4月 28 日に公布されたプロバイダ責任制限法の改正法により創設された非訟手続きで、コンテンツプロバイダ(一般的には、はてななど投稿サービスを運営する事業者)に対する開示命令の申立てと経由プロバイダ(一般的には、接続サービスを提供する通信事業者)に対する開示命令の申立てを一つの手続きにより行うものである。

この手続きは、発信者情報開示請求の手段の一つとして新しく追加されたもので、従来のプロバイダ責任制限法に基づく発信者情報開示請求の手続きと置き換わるものではない。

発信者情報開示命令事件の流れについては、日本テレコムサービス協会によるプロバイダ責任制限法発信者情報開示関係ガイドライン別冊「発信者情報開示命令事件」に関する対応手引きなどを参照のこと。

発信者情報開示命令事件への対応

はてなが発信者情報開示命令事件による通知や提供命令を受けた時の対応方針は以下に記載する。

開示請求者に対する経由プロバイダ情報の提供

裁判所からはてなに対し経由プロバイダを特定して開示請求者に提供するよう提供命令があった場合、はてなは命令に応じ保有している経由プロバイダ情報を調査し請求者に開示する。
経由プロバイダ情報は、発信者が情報送信の際に使用したIPアドレスからWhois情報を調査し特定する。

情報送信の際の発信者情報が特定できない場合、代替情報としてログイン情報を発信者情報とすることがある。
その場合は、原則として情報送信の前のログインのうち情報送信日時に一番近いログイン情報を開示する。

経由プロバイダに対する発信者情報の開示

開示請求者からはてなに対し経由プロバイダに発信者情報開示命令の申立てを行った旨の通知があった場合、はてなは経由プロバイダに対して請求対象となっている発信者情報を開示する。

開示請求者に対する発信者情報の開示

開示請求者に対する発信者情報(住所、氏名など)の開示の可否を審理するため裁判所からはてなが意見聴取を受けた場合、はてなは顧問弁護士に委任し対応を行う。

はてなの保持している発信者情報(登録メールアドレスなど)について裁判所から開示命令があった場合には、はてなは開示請求者に対し情報を開示する。

仮処分請求、訴訟への対応

発信者情報開示や情報の送信防止措置を求めて仮処分の請求や訴訟があった場合、はてなは顧問弁護士に委任し対応を行う。
裁判所から和解勧告があった場合、顧問弁護士との協議により和解に応じるか否かを決定する。

発信者情報開示を認める決定や判決があった場合、および発信者情報開示を条件として和解した場合には、決定等に応じ情報開示を行う。

警察からの照会への対応

警察からの電子メールや電話での照会に対して発信者情報や非公開のサービス利用情報の開示は原則として行わず、文書により対応する。
捜査関係事項照会書での照会に対しては、プライバシーポリシー(4)個人情報の提供、開示に定める項目に相当する場合のみ発信者情報を開示する。
捜査令状が発令された場合には、差し押さえに応じ発信者情報を開示する。

プライバシーポリシー(4)個人情報の提供、開示に定める項目のうち、e および f に相当し緊急の必要性が認められる場合、はてなから警察に通報し情報の提供を行うことがある。

発信者への意見聴取(意見照会)

プロバイダ責任制限法第6条では、事業者が同法に基づく発信者情報開示請求を受けた際には、発信者に対して意見の聴取を行うことが義務付けられている。発信者情報開示事件や仮処分の請求、訴訟により発信者情報の開示請求を受けた場合、同法に基づき発信者に意見照会を行う。
発信者から発信者情報を開示すべきでないとの意見があった場合、請求者に対する発信者情報開示の可否を検討する審理においては、発信者から聴取した意見を尊重して対応する。

警察による照会、差し押さえなどがあった場合、はてなは発信者に対する意見照会は行わない。

発信者への通知

裁判所の命令によりはてなが請求者に発信者情報を開示する際には、発信者に下記の内容を通知する。
・事件番号
・請求者
・請求対象となった記事URL等
・開示した情報
請求者と発信者がそれぞれ同一の複数の事件が進行している場合、すべての事件の決定まで発信者に通知しない場合がある。

決定や判決の詳細な内容について原則としてはてなから発信者に通知しない。
警察による照会、差し押さえなどに対し発信者情報を開示した場合、開示した旨ははてなから発信者に通知しない。

発信者情報開示にともなう情報削除

はてな利用規約第6条 (禁止事項) 第1項では他者の権利を侵害する行為を禁止事項としている。裁判所により発信者情報開示の決定がある場合、発信された情報が権利侵害情報に相当するとの判断があったと考えられるため、原則として情報の公開を停止する。

後日、発信された情報が権利侵害情報に相当しないとの判決があり、発信者から情報の再公開を行うよう依頼があった場合、対象情報がはてな利用規約やサービスのガイドラインに違反しないと判断できる場合に限り、情報を再公開する。

改定履歴

  • 2024年11月29日 公開